
近年カジノやエンターテイメント以外にも世界有数のグルメシティーとしてラスベガスがどんどん注目を浴びている。世界有数のセレブシェフ、本場フランスの三ツ星シェフが次々と出店しミシュランやザガットと言ったレストランガイドも発売されるようになった。そんなラスベガスに数ある有名店の中でも群を抜いて高い人気と知名度を誇るのがジョエル・ロブションとピエール・ガニェールのフレンチ二大巨頭。フレンチの皇帝ともいわれるロブションは早くにシェフとして一線から引退以後、プロデュースに専念し日本を主に海外展開を行っていることもあり日本での知名度も高い。一方ピエール・ガニェールは60歳を過ぎた今でも自身が厨房に立って料理を作り、強いオリジナリティーで表現された芸術にほれ込む人も多い。そんなピエール・ガニェールの下で長年経験を積み、昨年2012年5月よりラスベガスのTwist by Pierre Gagnaire/ツイスト・バイ・ピエール・ガニェールにてヘッドシェフを任せられている一人の日本人シェフ 川崎竜喜さんにインタビューを行った。
まずはTwistでお仕事を始められた経緯を教えていただけますか?
川崎:ボクの前にTwistのヘッドシェフをしていた、パスカルとは昔からロンドンのガニェールさんのお店で一緒に仕事をしていたのですが、4年前に「ラスベガスの店を任せられることになったから一緒に来て欲しい」と、彼に誘われてセカンドシェフとしてラスベガスに来ました。その後、彼が昨年自分のお店を開く為フランスに帰ることになり、彼の周りの推薦もあって僕が後を引き継ぐ形で、今ここを任せられています。
凄くお若いのにピエール・ガニェールのお店を任せられて、さらにその経歴が凄いと伺ったのですが、今までの経歴を少し教えて頂けますか?
川崎:いえいえ、そんなボクはまだまだ(笑)。高校卒業後に日本でフランス料理の専門学校に行き、その後フランス校に進学し、ポール・ボキューズのお店で働かせてもらいました。ビザの問題もあって日本に帰るときに「紹介状を書いてやるから日本ではどこで働きたいんだ?」って言って頂き、当時恵比寿ガーデンプレイスがオープンした頃で凄く注目されていたので、新しくオープンした「タイユバン・ロブションで働きたい」って言ったら本当に紹介状を書いてくれましてね。
それで、日本に戻ってきてからは5年ほどロブションで働いていました。その後ですね、やっぱり「フランスにもう一度行きたい!」ってパリに行って、そこからロンドンに移って、ガニェールさんのお店で働き始め丁度8年位です。
凄いですね。ボキューズ、ロブション、ガニェールを渡り歩いた方は中々いないですよね。やっぱり師匠それぞれ強烈な個性がありますか?
川崎:そうですね。やっぱり皆それぞれ違いました。ボキューズさんは勿論MOF(国家最優秀職人章:日本の人間国宝に相当)持っていますし、お店に3,4人はMOFがいるんですよ(笑)、ちょっと有り得ないですよね・・・料理は凄くクラシックで、フランス料理の伝統、文化を大切にしている人でした。
ロブションさんは常に完璧を求める人。とにかくキッチンにも人が多くて、一人ひとりがいかにしてロブションの精神を受け継ぎ、いい仕事が出来るか緊張感のある調理場でした。
ガニェールさんは職人と言うよりは芸術家。常に自分の色をとても大切にする、芸術的なひらめきとかはやっぱり凄いですよね。彼は今でもシェフコート着て自らキッチンに立って料理したり創作意欲は凄いですよ。料理人としてだけではなく凄く尊敬できる人です。
でもなぜ日本料理ではなくフレンチだったのですか?
川崎:小学生の頃から料理が大好きで、学校から帰ってきては祖母や母の手伝いとかよくしていたんですね。その時はやっぱり和食が多くて、お醤油とか、みりんとかある程度決まった調味料で味付けするじゃないですか。でもフレンチってマヨネーズにしても卵から作ったり、調味料から自分で作るので未知数の無限な魅力に惹かれたんです。
Twistならではの特徴を教えてください。
川崎:ガニェールさんは今、世界に11店舗展開していますけど、どこもそれぞれ違った個性を持っているんです。勿論、ここも最終的なメニューはガニェールさんからOKを頂いてからでないと決まらないし、僕が決めたものを変更される事もあるんですが、基本的にはシェフ一人ひとりの個性を大切にしてくれているので同じガニェールさんのお店でもTwistならではの個性がある事でしょうか。
では、Twistならではの個性で川崎さんが大切にしている事は?
川崎:そうですね。なぜ日本人の僕がアメリカでフレンチを作っているのか。無意識のうちに生かされている、日本人らしさやアドバンテージ、特色ってのがやっぱりお皿を通して伝わるようなんですね。そういったモノを大切にして行きたいなと思っています。
日本を離れてみて惹き付けられる日本の魅力だったり、日本にいたら気がつかないことにも海外で生活してきたから気付き、身についてる事も多いと思いますしね。
ヨーロッパや日本と比べてラスベガスで大変な事はありますか?
川崎:そうですね、沢山ありますよ(笑)。食材やお客さんの好みも全然違いますし、魚はヨーロッパから空輸で入れているのであまり違いはないんですが、ヨーロッパでは高級食材であってもアメリカでは需要が無かったりするものもあったりしてその土地柄によってお客さんの求めるものも違いますからね。
後は、アメリカは色々と衛生面に関する規制が厳しくて調理法とか保存法に凄くうるさいんです。ヨーロッパでは当たり前になっている便利な調理法が使えなかったり、折角いい食材が入ってきても調理法によって生かしきれなかったりするのは残念だなぁ・・・と思いますけど、まぁそれも新しいチャレンジというかいい経験ですよね。
休みの日はどんな事をされているんですか?
川崎:最近は子供と遊んだりしていますけど、やっぱり休みの日でも料理を作ったりしていることが多いですね(笑)。自分がおいしいものを食べる事が好きなので、自分が作ったものを誰かに「おいしい」って言ってもらえるのが生きがいなのかもしれないです。
あとはラスベガスはやっぱりフランス人のシェフが圧倒的に多くて、シェフのコミュニティーもあるので休みの日に食事会したり意見交換したり・・・やっぱり何かしら料理関連の事してますね(笑)。
川崎さんがシェフに成られてから物凄くお店の評判がいいですが、次の目標を教えてください。
川崎:昨年からこのお店を任せられて、昨年はそれなりの評価もしてもらいましたので直ぐに次の新しい目標に行くのではなく、まずは現在の評価を継続する事が今の目標です。
最後にTwistにいらっしゃるお客様にお店のお薦めを教えてください。
川崎:お薦めですか・・・景色じゃないですか?(笑)。そうですね、ガニェールさんの個性を引き継いで、やっぱり独創的なほかには無いメニューですね。
プロフィール | 川崎 竜喜 Ryuki Kawasaki |
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1976年、新潟県生まれ。高校卒業後、日本の調理師学校を経て渡仏。ポール・ボキューズやジョエル・ロブションの下で経験を積み、2012年5月にラスベガスのマンダリンオリエンタル内にあるレストラン、Twist by Pierre Gagnaire/ツイスト・バイ・ピエール・ガニェールのシェフに就任。以降ガニェールの右腕として世界を股に活躍する注目のシェフ。 | |
Twist by Pierre Gagnaire | http://www.mandarinoriental.com/lasvegas/fine-dining/twist-by-pierre-gagnaire/ |
日本語でのご予約: | http://ptsjapan.com/restaurant/934-mandarinoriental-twistbypierregagnaire.html |